小児鍼(こどものはり)について
●小児について
子供は、成長する力がみなぎっていますが、周知の通り生まれてすぐは母乳以外は口にできませんし、また物事を考え判断するという知恵を持っていません。それは中国医学の生態観から言えば、五蔵(肝・心・脾・肺・腎)の中で食物の消化吸収や思慮、体の大きさを左右する肉の産生を受け持つ脾の蔵だけが未熟な状態で生まれてくることによります。この未完の脾は、食や周囲からの諸々の刺激によって少しずつ養われ、だいたい高校生(思春期の終わる)頃に備わりますが、それまでは程度の差こそあれ常に大人以上の他の四蔵(特に脾<肝)との不調和があるわけです。その軽重によって、よく知られている疳の虫(かんのむし)・喘息・アトピー・消化不良・食欲不振・過食・肥満・下痢・便秘・風邪をよくひくなどをはじめとした、多種多様の症状が出ることになります。
この不均衡をより強くさせる条件がいくつかあり、主要なもののひとつとして食生活の乱れが挙げられます。最近は食文化が豊になったために、ファミリーレストランのドリンクバイキングでうろちょろする小さな子供や休日の昼間に親子でジャンクフード店で食事をするといった光景を目にすることが多く、ほかにも、おいしいジュースやお菓子を離乳後からすぐに与えだしたり、ぐずると手がつけられないためにごまかしとしてそれらをあげるといったことも多々見受けられます。食物を消化吸収する脾が未熟である子供には、当然ながら味の濃いものや刺激物、冷たいものなどは受け付ける力がそうあるものではなく、結果的にそれらは負担となり、長期的には脾の成長を妨げることになるのです。いわゆるおいしいものは、「甘」と書き、「うまい」「あまい」と訓じます。それらを取りすぎれば、ただでさえ未熟な脾がさらに弱ることになり、文字通り「甘い」「わがまま」な性格になってしますし、これは大人とて同じことで、気をつけないと精神的に不安定になってしまいます。そうして、ゆがんだ状態のまま脾が備わってしまえば、思慮深さに欠け善悪の判断がうまくできない状態に陥ってしまうのです。これまであった倫理観というものが近ごろ通用しなくなっている一因は、ここにあるのかもしれません。
上記した諸症状は、大人になるにつれ自然と治るものもありますが、一生もの(持病)として将来を共にするということも多々あります。それは、未熟な脾をうまく養えずに五蔵の不調和をより大きい状態にさせてしまった、つまり本人の成長する力を十分に発揮させられなかったがためと言えます。そうなってからでは手遅れです。“鉄は熱いうちに打て”と言うように、脾の成長が終わってしまう前に、また病がまだ新しいうちにそれを治療し、かつよりよい成長ができるよう心身のバランスを整えてあげましょう。

●使用する鍼について
 大人と同様の鍼を用い、皮膚鍼という鍼を持って皮膚をさするとう方法で治療をします。ですから、鍼を刺すということは一切ありませんので、“痛い”ということとは全く無縁なものです。さするだけで大丈夫なのか?と思われるかもしれませんが、子供は何事にも敏感ですから、少しの治療で驚くほど反応しますので心配はいりません。

●使用する灸について
 子供にもやはりお灸はします。古くから行われている“ちりげの灸”といって、背中の身柱というツボにごく小さなお灸(糸状灸)をします。ごく小さなお灸ですので、一瞬ちりっとした感覚がある程度でやけどの心配はありません。糸状灸いついては“使用する鍼・灸について”でも詳しく書いてありますので、そちらをご覧下さい。

●小児鍼の適応年齢
はりやきゅうにはお年寄りがするものというイメージがあるようですが、実際には違います。産まれてすぐの赤ちゃんでも治療は可能ですし、より健やかに育つという意味でも有効な手段のひとつでもあります。理想を言えば、鍼灸の持つ“治未病(未だ病ならざるを治す)”という性格を最大限に生かし、目立った病気がなくとも小さい頃より治療を続けていくことをおすすめします。

●治療時間について
治療の時間・量は、ともに大人にくらべてごくわずかになります。ですから、5分程度が目安になります。

●治療期間について
「何回くらい通えばよいのか?」という質問をよく受けますが、症状を起こしている体の状態は個々人によって異なりますから、たとえ同じ症状であっても3ヶ月であったり半年であったり、あるいはもっとということも多々あります(大人も同じことです)。また、簡単に治るものは本当にごくわずかで、体の状態を根本から変化させるには、それなりの時間が必要です(すぐに治るものは、ほっておいてもよくなります)。たとえば、アトピーや喘息などは、最低でも1年は必要です。それは、季節によって症状の軽重が変化しますから、翌年のひどくなる時期に悪化をしないということが確認されない限りは良くなってきているとは言えないからです(一見良いと思われる時にも治療を重ねることで、ようやく体の状態も変化するというものです。喘息や花粉症、メニエールなどはその最たるものでしょう)。時期によって症状が変化するのは、人の体もまた季節の移ろいとともに変化しているからで、治療の効果も同じく3ヶ月(1シーズン)経つ頃に顕著となってきます(もちろんその間にも少しずつ変化はしていきます)。
このようなことから、まずは週に2〜3回(最低でも週1回*)の治療を3ヶ月は続ける必要があります。最後は子供さんが元気に生長するということが一番の目的ですから、いずれにせよ多少の時間をかけてあげる必要がありますし、かければかけるほど良いとも言えます。
 *治療を治療たらしめるためには、症状の状態に関わらず、週1回という間隔は絶対です。それ以上の間隔をあけての治療では、継続して効果を積み重ねていくという点でははなはだ弱く、回復の時期も遅れる、あるいはよくなっていかないということになります。

●保護者の方へ
子供は、あらゆることに対し敏感に反応します。ですから、親の精神や肉体の状態を常に感じとっているということもご承知ください。また、それが子供の症状の原因になっている場合も多々ありますから、思い当たる節のある方は一緒に治療されることをおすすめします。
また、来院する前に、「はりを打ってもらいに行く」であるとか「○○を治してもらいに病院へ行く」といった子供さんの恐怖をあおるようなことはしないよう心がけて下さい。最初は白衣を着ずに治療しますので、本人には「誰々さんの家にちょっと行く」、「楽しい所に遊びに行く」などと言っていらしてください。
最後になりますが、どんなことでもそうであるように、治療には根気が必要となります。お子様の健康のために、面倒がらずに治療を継続して下さい。施術するのは私たちですが、治療を続けるのはみなさんですから。

 04/09/09掲載 06/11/20追加 12/09/28改訂

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