鍼灸の話:お灸をすえる回数の話
中国の晋の時代に書かれたと言われる『甲乙経』という鍼灸の専門書があります。その本の第三巻に“ツボ(古くは孔穴とか輸穴などと言われていました)”の位置をはじめ、それぞれに対する鍼の深さや留めておく時間、お灸の回数の指示に至るまで、事細かにそして系統的に配列されて書かれているんです。で、その中のお灸の回数を見ていくと一・三・五・七・九の奇数で統一されているということがすぐにわかります。この奇数という数は、陰陽で言えば陽の数となるんですが、それがどうした?と言われればそれまでですけれど、お灸をすえる回数が奇数で統一されているということには大きな意味があるんです。どういうことかわかるでしょうか?

その前に、そもそもお灸という行為にはどういう意味があるのか?ということを知っていないといけませんね。いろいろと方法はありますけれど、“もぐさ(艾)”に火をつけて燃やすということが基本となります。この火をつけて燃やすというのがポイントなんですね。火は熱を出しますから、陰陽で言えば陽に分類されます。つまり、お灸=火=熱=陽ということが言えます。もっと言えば、そこには体に“陽気を補う”という意図が隠されているということがわかるんです。

では、なぜ“陽気を補う”のか?ということもわかっておく必要があるでしょう。中国医学では、人の一生を“蔵(五蔵あるいは単に陰とも言います)の気の消耗”と考えるんですね。つまり、生を受けてすぐの蔵気の割合を100%とすれば、死の瞬間は0%になるということです。ですから、人は常に死に向かって突き進んでいるとも言えます。で、この“蔵気の消耗”を最小限に抑える、あるいは不摂生や人間関係によるストレスによる極端な消耗を回復するということが、“陽気(蔵の気)を補う”ということなんです。

このような予備知識をふまえてもう一度お灸の回数を見ると、それが奇数で統一されているという理由がすぐにわかるかと思います。そうです、回数という側面からも“陽気を補おう”という積極的な意思がそこにはもりこまれているんですね。  このような予備知識をふまえてもう一度お灸の回数を見ると、それが奇数で統一されているという理由がすぐにわかるかと思います。そうです、回数という側面からも“陽気を補おう”という積極的な意思がそこにはもりこまれているんですね。

このように、単純なことにも陰陽論という中国医学独自の隠し味が効いているんですね。今となってはこういった裏にあるような当時では当たり前であったことが、時間の経過(時代的変化)によってほとんどわからなくなってしまったというのが現状なんです。ですから、こつこつと古い本をなぞなぞを解くように読んでいくわけです。ただ単にお灸をすえるよりも、今している事の意味を理解してする方がよりよいと思いますから。


◆資料室◆へ戻る
| yoshioka49in | 資料室 | 00:27 | - | - | -