閑話:もぐさの天日干し
仕事柄、当たり前ですがお灸を毎日使います。この「灸」という字には、「火」を体に「久(つける)」ことによって病気を治療するという意味があります。

「火」は「熱」ですから、お灸をすえることによってその人の「陽気」を益すという意図があります。単純に体を温めると言ってもかまいません。

このお灸は“もぐさ”をひねって作りますが、その材料はヨモギの葉の裏にある柔らかい毛(柔毛)です。

それはさておき、“もぐさ”は天気がよい時には天日干しをします。なぜか?体に熱を入れるということは先に触れましたが、それが最大の理由となっています。

自然界で最も陽たるものといえば、文字からもわかるように「太陽」です。つまり、日の光にさらすことにより“もぐさ”により「陽」的要素を増やそう、とまあそういう目的なんですね。

その「陽」的要素が益せば(熱が加われば)、“もぐさ”の湿気がとれ、やわらかくなり、ひねり(お灸を作り)やすくなります。その結果、燃焼速度が速くなり、やわらかな熱さになるという現実的な効用もあります。

余談になりますが、今はお灸を使う(ことのできる)鍼灸院はずいぶんと少なく、たとえ使っても自らがひねらずに誰もが簡単にすえられる市販の温灸を用いることがほとんどのようです。理由は、術者がお灸をうまく作れない、そのためにやけどをさせてしまう恐れがある、煙が出て困る、患者さんが怖がる、などなど様々でしょう。

けれども、歴史的に見れば(湯液(いわゆる漢方薬)を別にすれば)お灸が常に治療の主体であって、それに対して鍼は出血や切開といった外科的な処置のためのものとして使われることがもっぱらでした。これまでに鍼が内科的な疾患(今風)に用いられたのは中国では後漢・金元明時代、日本では江戸時代前期(1600年代)だけです。現在は、これまでにない鍼のブームですが、やはり歴史の長いお灸もしっかりおさえておきたいものですね。鍼灸両者を用いるからこそ“鍼灸治療”と公言できるわけですから。



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